ポニーキャニオンからまた新たなフィギュアが登場する——。
TVアニメ放送開始10周年を迎えた『進撃の巨人』から、「人類最強の兵士 リヴァイ」の1/6スケールフィギュアを受注販売(2024年2月5日(月)23:59まで)。
商品化発表の際にSNSで国内外のファンから注目を集めた本作は原型師・さと氏が制作。約2年越しに完成した“理想のリヴァイ”の魅力を彼女に聞きました!
■好きなキャラをフィギュアにできる喜び——原型師になるきっかけとは?
——始めに、さとさんの原型師としてのキャリアをお聞きしたいのですが。
さと 私がフィギュアを作り始めたのは10年前くらいで、商業としては8年目になります。アニメ『TIGER & BUNNY』(以下、タイバニ)を好きになったことをきっかけにフィギュアの存在を知りまして。そこから、イベント『ワンダーフェスティバル』(以下、ワンフェス)にはガレージキットがあるんだ、予約をしないと買えないこともあるんだといろいろ知っていくうちに、どんどんフィギュアの世界に興味が湧いてきて、浅草の模型塾にフィギュア作りを習いに通い始めました。
——どうして作る側に興味を持ったんですか。
さと あるとき、SNSのタイムラインにある原型師さんが作成した『タイバニ』の胸像画像が流れてきて。それを見て“あっ、好きなキャラを自分で作ることができるんだ!”と知ってのめり込みました。商業でいつ発売されるかわからないなら、自ら作ってしまおうと(笑)。その後『ワンフェス』に作品を出すようになって、それがきっかけでメーカーの方にお声がけいただくことが増えて、原型師としてお仕事をさせていただいています。
■“一番カッコいい”にプレッシャー!?理想を追求したリヴァイ誕生秘話に迫る
——今回、制作のオファーを受けたときの心境はいかがでしたか。
さと 『進撃の巨人』が大好きで、単行本や別冊少年マガジンでも読んでいましたし、アニメも観ていました。さらに好きなキャラクターがリヴァイなんです。なので、オファーの際に「これまでにない一番カッコいいリヴァイをお願いします!」とお話いただいたときはプレッシャーもすごかったですが、その反面嬉しさや楽しい気持ちもありました。
——ちなみにリヴァイのどこに惹かれましたか。
さと 孤高な雰囲気と無口で強いところです。毎回死んでしまわないかと覚悟しながら読んでいました。オファーをいただいた頃、ちょうどリヴァイのガレージキットを作りたいなと思っていたので本当に嬉しかったです。
——本商品のポージングはオリジナルだそうですね。
さと スタッフチームと一緒に、みなさんが求める“理想のリヴァイ”のフィギュアとはなんだろうと考えたところ、やはり戦闘シーンの力強く空を舞うリヴァイにたどり着きました。その上で、体をどうひねっていて、顔はどこを向いていて、腕はどんな角度で、など細部までかなり時間をかけてまとめました。
——打ち合わせは大変だったのでは。
さと 今回パソコンの3Dソフト上で製作したので、メールでのやり取りが行えて思っていたよりもスムーズでした。
——ポージングを決めた後は、その動きに対して筋肉をつけていったとお聞きしました。
さと そうなんです。素体の段階で筋肉をつけたほうが、服のシワや盛り上がりを考えるにも、この筋肉がぐっと盛り上がるからこの方向にシワができるなど、きちんと整合性がとれるんです。体のバランスが崩れていると、服を着せても気持ち悪いままになってしまいますので。
——そのような意図があったんですね!ということは、さとさんは筋肉の動きについて勉強をされているのですか?
さと 関連書籍を見るのはもちろん、ハリウッドでも活躍する造形家・片桐裕司さんの彫刻教室に通っていました。教室では、モデルさんが取ったポーズを粘土で作って、また違うポーズで作ってということを繰り返すことで、リアルな体の構造を知ることができるんです。筋肉はもちろん、骨盤や肋骨など骨の動きも客観的にわかるようになりました。
——そういう努力があったからこそ、リヴァイの力強いポーズが誕生したんですね。
さと やはり好きなキャラクターをカッコよくしたいという一心ですね。監修進行の際には、筋肉の付き方がリヴァイの体格として合っているか確認をいただいたうえで、服を着せる作業に入っています。
——では、その衣装まわりでのこだわりというと。
さと 服のシワなどをどれだけリアルに再現できるかですね。ネットで調べるよりも実際に自分でジャケットを着て、腕を上げて腰をひねったときにどうシワが入るかなど確認しました。後ろ姿など自分で見えない部分は家族に写真を撮ってもらったり、服を着てもらったりもしました(笑)。
——だから細部まで表現されているんですね。あと、デコマス(デコレーションマスター)を見て驚いたのが、立体機動装置の造形が細やかでカッコよかったです。
さと 私もまじまじと見てしまいました。立体機動装置は株式会社Pawrettaさんがデザインされていて。いただいた完成データをポージングに組み合わせると、装置の左右のバランスが変わってきますし、原作とかけ離れた動きにもしたくないので、物理的な側面を考えながら調整するのはかなり難しかったです。
——その苦労があって、あのクオリティが保てたんですね。
さと デコマスは今後11月13日(月)より、あみあみ 秋葉原ラジオ会館店に展示される予定なので、みなさんにもぜひ間近で見ていただきたいです。
■海外からも好感触!各分野の精鋭たちのタッグで“一番カッコいい”を実現
——ちなみに、さとさんが造形される中で大切にしていることとは。
さと ポージングの前後のストーリーを意識しています。例えば、刀を振り下ろすポージングでも、敵の攻撃を受けて振りかかるのか、自分から先に攻撃をしているのかによって、重心の置き方が変わってくるんです。髪やマントのなびきかたにも影響が出るので、すごく大切にしています。今回は、巨人に斬りかかっているシーンを意識したので、みなさんは巨人のつもりで見ていただくとさらに臨場感が増すと思います。
——彩色に関しては、ピンポイントさんが手がけています。
さと デコマスの段階ではすでに自分の手を離れているので、純粋に“カッコいい!”と思いました。全体的にグラデーションや塗りわけがすごく細かくて、いい塗りでした。特に、顔は自然な影が落ちるように眉間のシワやまぶたのラインの凹凸も表現していたので、塗装でよりリヴァイらしいカッコいい表情に仕上がっていると思います。
——表情や彩色を間近で見るとよりカッコよさが伝わってきました。商品化が発表された後、SNSなどでの反応はいかがでしたか。
さと どう受け止められるんだろうとドキドキしていました。特に海外のファンの方たちから、いつ発売するんだ?サイズはどのくらい?知っているなら教えてくれ!などいろいろな問い合わせがきて嬉しかったです。ただ、まだ情報解禁されていないことばかりだったので、きちんとお答えできずもどかしかったです(笑)。
——みなさんの手元に届いたときの反応も楽しみですね。それでは最後に、さとさんにとってのフィギュアという存在とは。
さと 朝から仕事としてのフィギュア制作をしていて“今日はここまで”と作業を終えた後に、自分用のフィギュア制作を始めるので、自分にとって楽しいものなんだと思います。例えば、お仕事で修正の指示が入っても全然苦じゃなくて、それすらも楽しんでいますし。
——プライベートでは何を製作されているんですか?
さと 個人的に好きなマンガやアニメのキャラクターです。やっぱり好きになるとフィギュアを作りたくなって、“よし、こねるか!”とパソコンに向かってしまいます(笑)。出来上がったらSNSにアップして、みなさんからどんな反応が来るのかも楽しみのひとつですし。
——日によっては、ほぼ1日中製作されているんですね!
さと そうですね。自分が知らない作品のお仕事が来たら、もちろん作品を観るじゃないですか。そこで新たな好きなキャラを発見すると、自然と作りたくなってしまうので。フィギュアは私の日常に欠かせないですね。